ムケッカは、魚介のココナッツクリーム煮込み。ブラジル北東部にあるバイーア州を代表する伝統料理だ。
私が単身赴任していたレシフェは、そのバイーア州のとなり、ペルナンブッコ州の州都である。だからブラジルにいる間、ムケッカもよく食べたものだった。
今日は一緒にブラジルに行っていて、今は愛知で勤務しているN口さんが仕事で上京されるとのことで、同じくブラジル組のS藤さん、K藤さんも誘って、4人で帝劇ビル地下にあるブラジル料理の店、「カフェ・ド・セントロ」にやってきた。
N口さんからは「魚料理が食べたい」という希望が出されていたので、今日の目玉はムケッカと決めていた。
ムケッカはPが1,280円(これ以降、価格はすべて税別表記)、Gが2,480円。
PはPequeno(ピッケーノ、小さい)、GはGrande(グランジ、大きい)ことを示している。
「Gで大丈夫かなあ。ものすごいのが出てこないだろうか?」
「いやあ、日本だから大丈夫なんじゃない。4人だし……」
ブラジルのレストランで、Gなんかを頼もうものなら、「うわぁ、どうしよう。絶対に食べきれない!」というぐらいの量が出てきて困ることが多かったのだ。その記憶が、ふと頭をよぎったのだった。
「そうだよね。ここは日本だもんね」
ということでGを1つ、注文した。
「あら。最初からお食事にされるんですか?」
と店のおねえさん。
「いや。ムケッカをつまみに飲みます」
「あぁ、なるほど(笑)」
このおねえさん、日本語も達者だけど、ブラジルの方のよう。お店のスタッフの多くがブラジル人のようで、お客とは日本語で話すけれど、厨房に注文を通したりするのはポルトガル語だ。
たとえば「カイピリーニャ(600円)を砂糖なしでください」と注文すると、「はーい」と注文を受けてくれて、飲みものを作ってくれるバーテンダーには、「ウーマ・カイピリーニャ、セン・アスーカ、ポルファボール」と注文を通す。
ポルトガル語を聞くのも久しぶりだなあ。
さあそして、ムケッカがやってきた。
おぉ、比較的小さい。この量なら全く問題ないね。
昨年末に帰国して1年。日本でムケッカを食べるのはこれが初めてだ。
一緒に出してくれるごはんを小皿に取り分け、おたまですくったムケッカをかける。
ブラジルにいる時も、ムケッカはごはんにかけて食べていた。ごはんにかけて食べるのが美味しいのだ。
ただし、ブラジルのごはんは粘りっけなしのパラパラごはん。この店で出されるのは、日本風の、普通のごはんだ。それでもムケッカをかけて、チョチョイと混ぜると、ブラジルで食べたのと同じような感じになる。
「これは混じりっ気のない上品な味わいだねえ!」
「このムケッカ、まじで美味いですねえ」
「ブラジルのムケッカは、(本来は捨ててるはずの)エビのヒゲなんかも入ってたんだけど、ここのにはそういうのは全然ないね。すごくていねいに作られてる」
そんな会話を交わしながら、あっという間に食べ終えた。
他にも「タピオカ芋のカリカリフライ(マンジョッカ・フリッタ)」(580円)や「干し鱈のコロッケ(ボリーニョ・ジ・バカリャウ)」(6個500円)、「牛肉と麦のコロッケ(キビ・ジ・カルニ)」(6個500円)、「パステウ(ブラジル風揚げ餃子)」(1個300円)、「もっちもちチーズパン(ポン・ジ・ケージョ)」(1個90円)などの懐かしい料理を次々に注文する。
飲みものもブラジルにいた時と同じように、まずカイピリーニャ(600円)を注文したら、次はカシャーサだけをダブル(580円)でもらって、飲み終えたカイピリーニャのグラスに注ぎ入れる。
こうすると、カイピリーニャのグラスに残っているクラッシュ・アイスやブラジルレモンなどを有効活用することができるのだ。
言ってみれば、「ホッピーのナカおかわり」みたいなもんですね。
店内はすっかり満席状態だ。お客は全員が日本人。人気あるんですねえ、ブラジル料理。
気がつけばもうすぐ午後10時。なんと3時間半も居座っちゃったぜい。
お勘定は4人で20,139円(税込)。ひとり当たり5,035円だった。
「どうもごちそうさま。おいしかったです。オブリガード」
店の外にまで見送りに出てくれたおねえさんに、そう声をかけると、
「オブリガーダ。今度はカシャーサをボトル(750ml瓶が2,800円)で入れると、もっと安くつくと思いますよ。また来てくださいね」
と笑顔で手を振ってくれた。次回は絶対ボトルにしよう!
「カフェ・ド・セントロ」 |
アマゾンビールで乾杯 |
料理メニュー |
飲みものメニュー |
マンジョッカ・フリッタ |
バタタ・フリッタ |
カイピリーニャ |
ムケッカ・バイアーナ |
パン・ジ・ケージョ |
キビ・ジ・カルニ |
ボリーニョ・ジ・バカリャウ |
ベテハーバとパウミット |
マンゴーのジュースとビール |
パステウ(ヴィナグレッチ) |
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